合成燃料(e-fuel、e-メタン)はカーボンニュートラルか?

合成燃料とはCO2とH2を合成して製造される燃料である。 合成された石油はe-fuel、合成されたメタンはe-メタンと呼ばれる。

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これらは、カーボンニュートラルの技術として取り上げられることが多いが、 本当にカーボンニュートラルなのか考えてみる。

以下はe-メタンに関してよく説明に使われる図だが、これを見ると、一見カーボンニュートラルであるかのように見える。

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ただ、CO2は本当に増加していないのだろうか? CO2は再利用しただけだから、増加していないというのは違和感がある。以下に整理してみる。

CO2は再利用により、これまでよりも半減していることがわかるが、 0になったわけではない。つまり、カーボンニュートラルではないと言える。

合成燃料をカーボンニュートラルとする方法がいくつかあるが、実現性は厳しい

  • DACによりCO2を大気中から回収→大気中CO2濃度は400ppm程度と非常に薄く、現状の需要を賄うことは極めて困難
  • 使用先で合成→車や一般家庭でCO2回収は非現実的。工場やビルでもコスト・設置スペース等の観点から厳しい
  • バイオマス由来のCO2で合成→バイオマス自体がカーボンニュートラルなので、合成後もカーボンニュートラルと言える。ただ、バイオマスのスケールアップには大量の森林伐採が必要であり、伐採した分の再植林まで考えると厳しいか。

合成燃料は低炭素に資する短期的な取組としては意義があるが、中長期的(例えばカーボンニュートラルを実現する2050年断面)な取組としては微妙なところである。

カーボンニュートラルではないため、CO2をどう計上するかが最近話題になっているようだ。 メタネーション推進官民協議会では以下の図が掲載されている。

https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/methanation_suishin/pdf/011_03_02.pdf

要は現排出側と利用側のどちらでCO2を排出したかを議論しているものである。 議事録を見ると、現排出側にてCO2排出を計上をする方向で動いているようである。

合成燃料の事業者としては、利用側に「利用側で実際にはCO2を排出しているが、CO2の排出責任は現排出側に押し付けておいたので、CO2排出はゼロでいいですよ」と説明するのであろうが、 地球全体で考えるとCO2が増加してしまうのは事実であり、果たしてそれで皆が納得するのであろうか?