R3年 大規模大気特論 問6(トレーサー実験)

問題

現地トレーサー実験に関する記述として,誤っているものはどれか。

  1. 対象とする発生源や模擬発生源からトレーサーを放出し,発生源周囲の多数の地点で濃度を計測する実験である。
  2. 新たな大気汚染予測モデルの構築や評価に必要となるデータ取得に利用される。
  3. 実際に排出されている大気汚染物質や,事故時に漏出する物質などの挙動を把握するために行われる。
  4. ガス状トレーサー物質として,現在は主に六ふっ化硫黄(SF6)が使用されている。
  5. 日常的な大気汚染の予測に,実験結果をそのまま用いることは少ない。

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解答

(4)

解説

新設の施設では従来の大気拡散の知識のみでは十分に対応できない場所での濃度予測が求められることがあります。このような場合に新たな大気汚染予測モデルの構築と評価が必要となるため、エアトレーサー拡散実験に必要な情報を得ることとなります。

エアトレーサー拡散実験とは、実際に排出されている大気汚染物質などの挙動を把握するために、人間や環境に害がなく、分析の容易な物質をトレーサーとして、対象とする発生源から放出し、発生源の周囲の多数の地点でその濃度分布を測定する実験のことです。

粒子状トレーサー物質としては塩化ディスプロシウムなどの希土類元素系トレーサーがありますが、費用が高いです。また、ガス状トレーサー物質としては過ふっ化シクロヘキサン系のトレーサー(PMCH,PDCHなど)が開発され、六フッ化硫黄(SF6)に代わって、代表的なエアトレーサー物質として利用されています。

現地でのエアトレーサー拡散実験では、実験時の気象条件と排出条件が予測に必要な要件を満たしているか否かの確認が困難なため、実際の予測にそのまま採用されることは少なく、予測に用いられる拡散モデルの検証のためのデータ取得に利用されることが多いです。

(4)について、ガス状トレーサー物質として,現在は主に六ふっ化硫黄(SF6)ではなく、過ふっ化シクロヘキサン系のトレーサー(PMCH,PDCHなど)などが使われていますので、(4)が誤りとなります。

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