R2年 大気有害物質特論 問10(鉛分析方法)

問題

 JIS による排ガス中の鉛分析方法と分析操作に用いる部品,試薬等との組合せ として,誤っているものはどれか。

(分析方法)(部品、試薬等)
電気加熱原子吸光法硝酸インジウム
フレーム原子吸光法アセチレン ‒ 空気
フレーム原子吸光法鉛中空陰極ランプ
ICP 発光分光分析法トーチ及び誘導コイル
ICP 質量分析イットリウム溶液

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解答

(1)

解説

鉛の分析方法について、以下にまとめます。

適用濃度範囲 測定条件 特徴 妨害成分
フレーム原子吸光法 Cd:0.05~2mg/L
Pb:1~20mg/L
使用炎:アセチレン-空気
波長:228.8nm(Cd)
283.3nm(Pb)
試料溶液をアセチレン-空気フレーム中に噴霧し、カドミウムによる原子吸光を測定
光源には中空陰極ランプを使用
カドミウムの濃度が低いときは、溶媒抽出濃縮を行い、得られた溶液について吸光度を測定する。あらかじめ作成した検量線を用いて、カドミウム濃度を算出する。
アルカリ金属(Cdの場合、塩化ナトリウム)
電気加熱原子吸光法 Cd:0.5~10μg/L
Pb:5~100μg/L
波長:
228.8nm(Cd),
283.3nm(Pb)
マトリックスモディファイヤーとして硝酸パラジウム(Ⅱ)を用いる。 酸、塩の種類・濃度に依存
ICP発光分光分析法 Cd:0.01~2mg/L
Pb:0.1~2mg/L
波長:
214.438nm(Cd)
220.351nm(Pb)
試料溶液を誘導結合プラズマ中に噴霧し、カドミウム又は鉛の発光を測定する。
試料の採取は、排ガス中のダスト濃度の測定方法に準じて行う。
分析用試料溶液の調製には一般に湿式分解が用いられる。
プラズマを形成するためのガスには、アルゴンを用いる。
試料溶液は、誘導結合プラズマ中にミストとして導入される。
カドミウムの他に、鉛、ニッケルなどを同時に定量することができる。
高濃度のNa,KmMn,Ca
ICP質量分析 Cd:0.3~500μg/L
Pb:0.3~500μg/L
内標準物質として、試料溶液にイットリウム溶液を加える。
鉛及び内標準物質のそれぞれの質量/荷電数におけるイオンカウントを測定し、その比を求めて鉛を定量する。
ニッケルやマンガンなども同時に定量できる。
Cd:酸化モリブデン
Pb:酸化白金

(1)について、電気加熱原子吸光法では、マトリックスモディファイヤーとして硝酸インジウムではなく硝酸パラジウムを使うため、誤りとなります。

なお、マトリックスモディファイヤーとは、分析対象物質の妨害成分(=マトリックス)の影響を除去し、対象成分を高感度で測定(=モディファイヤー)するために加える物質のことです。

解説記事

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